少し歩いた交差点付近で信号待ちをしている顔には少し見覚えがある。
ごめん、嘘ついた。
顔はあんまり覚えていなかったけど、男性の持っているペットボトルは婚活会場で全員に配られたのと同じだった。
おそらく、遅刻した9番さんか?
そんなことを考えていると、丁度目が合ってお互いにペコリと頭を下げる。
私に興味0の人だと知っているため、この人なら話しても大丈夫かということで目的地に着く途中まで話しませんか?と提案してみたらOKを頂く。
目的地まで近いし、人通りも多いし、ガリガリだし、変なことはしてこないだろうと調子に乗っていた。
「どの人を希望に書いたんですか?」と聞くと3人のうち、今回マッチングした2人の女性の番号を言っていた。
すべて回った結果、最初の席の女性が一番よかったらしい。
何度か参加しているようで、今回は参加人数が多すぎてマッチングしにくかった。と不満をいっていたけど
9番さんが遅刻したせいも少しはあるんじゃないかなと。
理由にもよるけど平然とデートとかでも遅刻してきそう・・・。
あとは人気女性を選びすぎなんじゃない?そのヨレヨレの服装なんとかしてから行った方が次につながりそうや。言わないけど!!
そんな事、話しているうちに目的地に近づいたので
「じゃあ、私はこれで・・・」と別れようとすると、とても意外そうな顔をされた。
じろじろと目的地の飲食店のメニューを眺める9番さん。
「えっ、このまま帰るけど、いいの??」
「・・・はぁ?」
「俺の事気になっているんだよね?奢ってくれるなら、付き合ってあげてもいいけど?」
「」
どうやら変な男性を引いてしまったようだ。私が自分に興味を持っていると思いこんでしまったようだ。
どういう思考回路をしたらそうなるんだ。しかも私も希望した男性を聞かれた時にお前の番号言ってないよね?忘れちゃってるのかな???
私が気になったのパーティーに参加した女性層の話であって断じて目の前にいるお前ではない。
と全てを吐き出したかったのだが、いかんせん店の前。
それにその後のことを考えると、思っている事を全て言ったら言ったで帰り道に襲われそうで言えなかった。
「結構です。興味ありません。」と勢いで入店。
店員さんに何名様ですかと聞かれ「1人です!!」と言い切った。
店の扉は常に開けっ放しだったから後ろにいる9番にもよく聞こえたことでしょう。
しばらく窓からこちらをチラチラとみていたけど入ってくる勇気はないようで暫くしたら居なくなっていた。
お気に入りの飲食店なんて教えるんじゃなかった。
こいつが知って店にくるようになったらどうしようと思ったけど
女性客の多い店だったので見るからに陰キャのこいつは1人では来られないだろうな。と嘲笑った。
これが私の精一杯。
そして、これからはマッチングしていない人と帰り道で一緒になったとしても、話しかけない事を心に決めた。
ありがたいことに他の人からも連絡先ももらったけど帰宅後、ハサミで切って捨てた。
同時進行する器用さは持ち合わせていない。特に9番さんの番号は細切れにしておいた。
その日の夜に1番さんからラインがきてデートに行くことになったけどそれはまた、後日。