に投稿 コメントを残す

どうやらわたくしは異世界に転移したようです?

音楽が流れます

あぁ、もう全部嫌なんだ。

私の席だけがクラスからなくなっているのも

馬鹿だ死ねだ消えろの暴言にまみれた教科書を見るのも

お母さんの作ったお弁当をゴミ箱に捨てられたのも

トイレの便器を舐めさせられたことも

食事に下剤を盛られ『下痢女』と罵られたことも

個室に閉じ込められて使用済みのソレを投げ込まれ頭から白濁液を被ったことも


もう、嫌だ!嫌だ!!!!嫌だ!!!!!!


「かのか、お前は優しい人になりなさい。決して人を憎んではいけないよ。そうすればみんなが助けてくれるから」

昨年、亡くなったおじいちゃんの最後の言葉だった。

おじいちゃん、私
優しい人になんて、なりたくなかった
そうじゃなきゃ、いじめられることなんて無かったのに

最初は後悔。
あの時、あの子を庇わなければよかった。
そうしたらターゲットが移ることはなかった。

セーラー服に身を包んだ少女は裸足で歩き始める。

肌を伝ってひやっとした感覚に襲われる。
あまりにも冷たかったので、より一層に死を間近に感じた。

今は2限目の授業中。
たくさんの人に印象付けられるように、あえてこの時間を選んだ。
眼下には誰もいないグランドが広がっている。

自室に用意してきた遺書にはこれまでのいじめの経緯を詳細に書き残してある。

後ろ指を指されながら生きるっていうのがどれだけ苦痛なのか
これだけ苦しめておいて、あいつらだけが幸せなんて許さない。
私をいじめたことを後悔しろ!!!!!!!

次に怒り。
どうして自分だけがこんな目に合うのか。
絶対に許せない。許してはいけない。

少女 かのか は屋上から身を投げ出した。

これで終わるんだ。

最後に芽生えた感情は安堵だった。
ようやく苦しみのない世界に行ける。そう確信したかのかは目を閉じた。


------

少し鼻につくツーンとした香り。
こんなお香を焚いたかしらと少女は目を覚ます。

見慣れぬ薄ピンクのネグリジェ。
フリルやリボンなどが一切ついていない簡素なデザインだ。

こんなネグリジェも見たことない。と嬉しそうに着心地を確かめていく少女

シンプルなデザインを好むこの少女には、昨今流行りの豪華なものはお目にかなわなかったらしい。

ツルツルとした感覚は東洋の絹かしら?
羽根みたいに軽いのね!

しかも前開きとは画期的!!
これならメイド達に手伝ってもらわなくてもすぐ脱げるわね!

そういえばそのメイド達があいさつに来ない。
格式高い公爵家へ勤めているメイド達は皆、勤勉であり職務を怠ることなどあってはならない。
変わったカーテンで包まれているとはいえ、向こう側は僅かに透けている。

よく見ればこの場所にも馴染みがない。一体何が起こっているのか。
幼い頃に読んだ心をくすぐられるような冒険小説を思いだしながら、手を伸ばす。

しかし目の前に現れたのは伝説の海底帝国や空想上のドラゴンではなかった。
そこにいたのは変わった格好をした中年女性だった。目を見開き驚いたような顔をしている。

驚きたくなるのはこちらですわ。
溜息をつきながら少女は目の前にいる中年女性に何か知っているのか問おうと口を開けたところだった。

「お前、ここはどこだかー」

「かのか!!心配したのよ!!」

急に抱きつかれ、不意に言葉を失った。

わたくしに抱き着いた…!?この、わたくしに?

ワナワナと怒りで身体が震えだす。

「あなたは一体、誰なんですの!!この私に許可なく触れるとは!!」

「だれかこの狼藉者を追い出してちょうだい!」

感情を露わにした尖り声で叫ぶと、女はその場で泣き崩れてしまった。

騒ぎに気づきなんだなんだと人が集まり出す。
どれも見たことがない使用人ばかり。
一部の使用人に至っては、このわたくしを抑えつけてきた。

なんて、なんて、無礼な!

だって、わたくしは

「控えなさい!わたくは公爵家令嬢のエステル・カステージョですわよ!!!」







コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA